Addiction (2)

あの鉄仮面と、「ダディー」こと、正義超人のリーダーであるロビンマスクは、一体どういう関係
だったんだ?
ことが済んだ後、マルスは、何ともすっきりしない気分だった。
まさか、あいつの親父、「スパルタ教育」と称して、息子に手を出してたのか?ならば、グレて当
然だよな。
しかし、マルスの感じでは、ケビンマスクの後ろは、今まで手付かずだったはずと思われた。

「なあ、そこの鉄仮面。」
年かさの超人が、ケビンマスクに話しかけた。
「お前、マルスにどんなことされたんだよ?」
「貴様の知ったことか。」
ケビンマスクは答えない。
「なあ、あのマルスの野郎、今はあんなだが、ガキの頃は、そこらじゅうの連中に犯されまくって
たんだぜ。なんせ、あいつ、目を見張るくらい綺麗な顔してるだろ。何を隠そうこの俺様も、美
少女マルスのケツを、何度も拝ませてもらったんだぜ。今じゃ、とても相手になどしてくれねえ
けどよ。」
「ケ、変態野郎め!この俺に、何が言いたいんだ?」
「だ・・・だからよう、あいつ、今でこそ、スパーで破った相手を『犯して』いるようだが、あいつ、も
ともと、『犯され』るのが専門なんだぜ。だから、実は、『犯す』よりも、『犯される』方が好きなん
じゃねえかと思ってよ。お前と何したか、ちょっと興味あってな。」
「フン、余計なお世話だ。怪我しねえうちに、とっとと消えやがれ!」
ケビンマスクはそう言うと、後ろを向いて立ち去った。

しかし、塒に戻ったケビンマスクは、先ほどの超人の言葉が気になって仕方がなかった。
マルスを犯す・・・その姿を想像すると、何とも言いがたい興奮を覚えた。

俺は、マルスに屈服した・・・。あいつには、叶わなかった・・・。
ケビンマスクは、自分を屈服させたマルスが、もう一度自分を陵辱しにくるのではないかと覚悟
していた。しかし、あれから二ヶ月経ったが、マルスは一向にケビンマスクを犯しには来なかっ
た。それどころか、二人の間には何もなかったかのような態度を見せるので、ケビンマスクは
少々拍子抜けした。
あいつ・・・俺に興味がないのだろうか?それとも、あいつはやはり、犯される方が好きなのだ
ろうか?

そんな時、dMPにおける1年に一度の、いわば「儀式」である、過酷なトレーニングが行われる
こととなった。13歳以上の超人たちは、煮えたぎる溶岩の上に架かっている丸太の一本橋
を、両足に錘をつけた状態で腕の力だけで渡らなければならなかった。毎年、多くの超人が、
一本橋を渡りきれずに命を落とした。このことは、いわば、dMPにおいて本当に強いものだけ
を残すための「淘汰」と考えられていた。

「よう、鉄仮面。お前、入って2ヶ月足らずで、災難だな。」
マルスが、久しぶりにケビンマスクに声をかけてきた。
「フン、俺に心配は無用だぜ。」
ケビンマスクは、相変わらず、威勢が良かった。

超人たちが、次々と橋を渡り始めた。マルスとケビンマスクは、それぞれ、最後尾と、最後から
二番目に位置していた。
こんな橋、俺にとっちゃ、何てことはない・・・ケビンマスクは最初、そう思っていた。しかし、錘を
つけたまま渡るのは、想像を絶する苦しさだった。
「も・・・もうダメだ・・・。」
前を行く超人たちが、次々と溶岩の煮えたぎる奈落の底へと落ちていった。

「マルス・・・オレも・・・もう、体力の限界だ・・・。」
ケビンマスクが、弱々しく言った。
「何言ってんだよ、ケビン。ゴール手前じゃねえかーっ!ウダウダ言ってねえで、もっと根性出
しな!」
ケビンの後ろを行くマルスが、ケビンに向かってそう叫んだ。
「こ・・・この苦しさから逃れられるくらいなら・・・し・・・死んだ方がマシ・・・。」
ケビンマスクがそう言って、丸太から手を離した時、一本の太い腕が、ケビンマスクの手首をし
っかり捉えた。
「ど・・・どうしてくれるんだ。てめえが根性なしだから、オ・・・オレは2倍つれェ目に遭ってるんだ
ぞ!」
マルスがケビンマスクを引き上げた。
「マ、マルス、す・・・すまん!俺はお前に、一生頭が上がらねえ。」
「るせーっ!おまえがだらしねえからだ!ウダウダ言ってると、手放すぞ。」
その時、体を反転させたマルスの左側の腰に、鋼鉄の針が突き刺さった。

「マルス、大丈夫か?塒まで送っていくぞ。」
対岸に着くと、ケビンマスクが心配そうに言った。
「うるせー。付いて来るんじゃねえ!」
しかし、マルスが言うその声には、覇気がなかった。
「お前は俺の命の恩人だ・・・。」
「ケ、別にお前が好きで、助けてやったわけじゃないんだぜ。」
マルスはそう言うと、痛む腰を押さえながら、その場を去っていった。マルスの通った跡は、血
の跡が点々と続いていた。

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