Addiction (1)

「あの時お前を助けたのは、真からお前の命を救いたかったからじゃねえ!恩を売っておけ
ば、何かの時に役立つだろうと考えたからよ!」

スカーフェイスの脳裏に、自らケビンマスクに言い放った言葉が、幾度となく駆け巡った。
俺はなぜ、あんなことを言ってしまったんだろう・・・。いや、あんな言い方しかできなかったんだ
ろう・・・。
スカーフェイスは、携帯電話の、ケビンマスクからの着信表示を見た。オリンピックで優勝した
ケビンマスクに、何か一言でもお祝いを言ってやりたい気がしていたが、そんなことから、何と
なく、ケビンマスクと話をすることに気が引けてしまうのだった。そんな訳で、先ほどケビンマス
クから電話がかかってきた時、出る気になれずに、放置してしまったのだった。
し・・・しかし、あいつもすっかり成長したな。昔はあんなにヘタレだったのに・・・。それもこれも、
あの師匠のお蔭なのか・・・。
スカーフェイスは、dMP時代は自分の「弟分」であったケビンマスクに裏切られた衝撃から、彼
のことを、自分にとって、単に利用する対象としてだけの、どうでもよい存在だと思おうとしてい
た時期もあった。しかし、こうして、師匠との盤石の強さで結びついた絆の元、一皮剥けて大き
く成長した姿を目にすると、一抹の寂しさを感じるのだった。
ヘタレ・・・のくせして、dMPナンバーワンだったこの俺を、変な趣味に目覚めさせやがったあい
つ・・・。

しかし、いずれにしても、今更俺が、どうのこうの言える立場でもねえ。
スカーフェイスは、携帯電話を握り締めながら、ベッドに寝転び、ケビンマスクと過ごした日々を
思い起こした。

**********

スカーフェイスがケビンマスクと出会ったのは、もう4年以上も前・・・あの入替え戦から、3年以
上前のことになる。その時は、スカーフェイスはマルスという名前で呼ばれていた。
伝説超人の息子であるケビンマスクが、鳴り物入りでdMPにスカウトされて入ってきたとき、ス
カーフェイスは既に、スパーリングで実力ナンバーワンと、誰もが認める存在であった。
dMPに入ったばかりのケビンマスクは、やたらと威勢が良かった。10歳にならない頃に家出
をし、その後は、特に誰にも師事することなく、ストリートファイトを繰り返していたようだったが、
幼い頃の英才教育の賜物か、血筋によるものか、『悪魔製造工場』と呼ばれるdMPのスパー
リングにおいて、無敗を更新し続けていた。そんなケビンマスクは、実力ナンバーワンといわれ
るマルスの存在を知ると、当然のことながら、挑戦を挑んできた。
「お前が、マルスか?この俺の相手をしろ。」

しかし、結果はマルスにあっさり負けてしまった。
フン、所詮正義超人の甘やかされたボンボンじゃねえか。常に生きるか死ぬかの過酷な状況
にさらされている俺たちに、本気で叶うはずはねえ。
マルスがケビンマスクを組み臥していると、MAXマンが言った。
「なあ、マルス。この生意気な新人、たっぷり懲らしめてやろうぜ。」
スパーリングを挑んできたものを破った場合、勝者は敗者に何をしても良い・・・命さえ奪う権利
がある・・・のは、dMPの慣習であった。当然、リンチされ、殺される場合もあるし、敗者が美形
の超人の場合は、サディスティックに犯される・・・それも、多くの場合、輪姦・・・ことが多かっ
た。
「フン、残念だが、こいつは俺だけの獲物だぜ。美形と噂される奇公子をひいひい言わせてや
るのは、格別な楽しみだぜ。」
そう言うと、マルスは「獲物」を連れて、その場を立ち去った。

「この獣め!」
マルスの塒で、ケビンマスクは相変わらず威勢が良かった。
「おいおい、随分な言われ様じゃねえか。俺様、こう見えても紳士なんだぜ。」
「畜生!どこが紳士だ?」
「お前、俺がここに連れてきてやったことを、感謝するんだな。この俺と違ってあいつら、どんな
酷いことするか、知れたもんじゃねえぜ。俺様は、手荒なことはしねえし、何て言ったって、dM
Pナンバーワンの美形だぜ。この俺に抱かれるなんて、またとない僥倖だぜ。」
マルスはそう言うと、ケビンマスクの上に跨った。
「おい、顔ぐらい、見せてもらうぜ。」
そして、ケビンマスクのマスクに手をかけ、剥ぎ取った。
「お前、随分可愛いじゃねえか。せいぜい、あいつらにケツを狙われぬよう、注意しな。」

「ダディー、やめろ!」
マルスがいよいよ侵入しようとしたとき、ケビンマスクが狂ったように叫んだ。
それを耳にしたマルスは、一瞬手を止めた。
「フン、俺はお前の『ダディー』じゃねえぜ。」
しかし、そのまま、ケビンの中に侵入した。

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