The Reason Why I Care For You (2)

その時、俺は7〜8歳、奴は、おそらく20代後半だっただろう。
「おっ、お前がマルスか?噂には聞いていたが、すげ〜かわい子ちゃんだな!本当に、食っち
まっていいのかな?」
2本の角がある男は、初めて俺のねぐらに入ってきたとき、そう言った。そして、他の連中のよ
うに、いきなり犯すのではなく、暫く馬鹿話をしていた。
1時間くらいして、漸く、奴は行為を始めた。
「痛くはしねえから、安心しろ。」
男はそういうものの、2メートル半近いと思われるその巨大な男が、子供の俺に侵入するの
は、それだけで脅威だった。男は、色々と手を使って、俺の中を潤してはみたが、結局は、
500mlのペットボトルほどの大きさのものの侵入は無理だった。侵入を試みて、俺の顔が痛み
で苦痛に歪んだとき、男は行為をやめた。そのような状態でも、無理やり侵入しようとする連中
は数限りなくいるし、いや、むしろ、苦痛で泣き叫ぶ顔を見てより一層興奮する連中の方が多
いのだが、奴は、もう、無理に侵入しようとはしなかった。
「俺、相手に痛がられると、駄目なんだよな・・・。」
男は、照れ笑いをした。
行為をやめた後、奴は、しばらく俺の頭を撫でながら、また、馬鹿話をしていた。そして、
「今日は有難うな!」
男はそう言うと、俺の枕元に缶詰を置いて、出て行った。

その男の本名は、今も分からない。しかし、翌日、その男が、今おれの横に寝ている男のよう
に2本の角があることから、「バイソン」と呼ばれている、当時のdMPのナンバーワンクラスの
実力者の一人であることを知った。

その夜も、男はやってきた。俺は、奴は俺で欲望を満たすことは出来ないので、もう二度度俺
の元に来ることはないと思っていたのだが・・・。
「よう、マルス、元気にしていたか?」
昨日会ったばかりなのに、男はそんなことを言っている。
そして、奴は俺のねぐらに入ると、また暫く馬鹿話をしていた。俺は、黙って聞いている・・・とい
うか、聞いている振りをしている。長居しないで、とっとと目的を済ませて、帰ってくれればいい
のに・・・。もっとも、昨日の調子では、目的を果たすことが出来る可能性は、限りなく低いので
あるが・・・。
「マルス、お前、本当に可愛いな・・・。キスしていいか?」
聞かなくても、するくせに・・・。それとも、俺が断ったら、こいつはどうするのだろう?
しかし、俺を犯す連中で、俺の口にキスをしてくる連中は殆どいない。なぜなら、奴らは、俺に
舌を噛み切られることを恐れているからだ。
案の定、奴は、俺の口を塞いできた。舌が、ゆっくり侵入する。その舌は俺の歯茎をなぞり、や
がて、俺の舌に絡みつく。男は俺の舌をゆっくりと吸った。
「お前の舌、とんがってて、可愛いな。」
男は言った。そして、俺の首筋、肩、胸・・・そして、体中を、その唇と舌で愛撫した。
「どうだ、マルス、少しは気持ちいいか?」
「・・・」
俺は答えない。男の愛撫は、俺にとってはうざったかった。この男以外にも・・・そいつらも、サ
ディストとは対極のある意味「良心的な」連中であるのだが・・・俺に快楽を与えたがる連中は
いた。しかし、俺はもとより、快楽など求めていない。この行為は、あくまでも俺が生き抜くため
の手段。俺にとっては、せいぜい、「痛い」か「あまり痛くない」かの選択肢があるだけで、「快
楽」という選択肢は、元より存在しない。俺に快楽を与えるべく、あれこれやられる位なら、むし
ろ、とっととイって、「報酬」を置いて帰って欲しい・・・それが、俺が犯されている最中に、せめて
もの望むことであった。

「お前、まだ子供なんだな。」
全く声を出さない俺を見て、男が言う。余計なお世話だ。
男は漸く愛撫をやめたようだ。暫くくつろいでから、男が帰ろうとした時、言った。
「お前、これ食ったことないだろ。」
男はそう言って、袋一杯のオレンジを置いていった。もちろん、その時はその名前は知らなか
った。
「皮を剥くだけで、食べられるからな。」
男はそういうと、ニッコリと笑って、俺のねぐらを出て行った。
男が帰った後、俺は、オレンジをかじってみた。その味は、甘酸っぱく、疲れた体に沁み入るよ
うで、なんとも心地が良かった。

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