The Reason Why I Care For You (1)

その朝、スカーフェイスは目覚めた。横には、まだ、バッファローマンが寝ている。
ち・・・俺様としたことが、つい、こいつの術中にはまって、まんまと食わせちまったぜ・・・。
スカーフェイスは、前日の夜のことを思い起こした。
病院を脱走後、姿をくらましていた自分に、突然連絡をとってきたこの男・・・。散々飲み食いさ
せてくれて、馬鹿話して、それでも、簡単には食われまいと思っていながらも、どこか期待して
いた自分・・・。そして、この男が何もせずに俺に「タクシー代」を渡して帰ろうとした瞬間、思わ
ず、自分のほうから誘ってしまった・・・。しかし、今思えば、それもこいつの「策略」だったので
はないかと思えてならない。
しかし、スカーフェイスは、こんな状態・・・バッファローマンの横で無防備に寝ている状態・・・
を、悪いとは思わなかった。それどころか、妙な居心地の良さ・・・あるいは、懐かしさのような
ものを感じずに入られなかった。
突然、スカーフェイスの脳裏に、幼い頃の、遠い日の記憶が、懐かしさと、どこか切なさを伴っ
て、おぼろげながらも蘇ってきた。
そうだ、この男は、どこか、あの男に似ていたのだ・・・。
おぼろげだった記憶が、次第に鮮明になってくる。バッファローマンの寝顔を見つめながら、ス
カーフェイスは、遠い日の記憶を思い起こした。

**********

俺は、物心付いたときから・・・おそらく、5〜6歳の頃から、dMPにいた。だから、どこで生ま
れ、両親が誰なのかも知らない。イタリア出身であることは、後から聞かされた。しかし、詳細
については、今でもよく分かっていない。
悪魔製造工場であるdMPは、まさに、力こそが全ての世界だった。強い者が弱い者を征服し、
思い通りにする・・・それが、当たり前だった。
dMPは殆ど男ばかりの世界であった。若干の娼婦も訪れるが、圧倒的に数が足りないので、
男達は、基本的に、自分より弱い相手を犯しては、性欲を満たしていた。だから、力が弱く、端
正な顔をした超人は、野獣たちの格好の餌食であった。
俺は、14〜5歳の頃からこそは、dMPナンバーワンの実力を誇っていたが、子供の頃は、も
ちろん、大人の超人に力で叶うはずがなかった。加えて、俺の容姿は、どういう訳か野獣ども
の欲情をことさらに誘うらしく、12〜3歳になるまでは、常に、犯される危機にさらされていた。
俺を初めて犯したやつが誰であるか、名前も顔も覚えていないし、知りたいとも思わない。無駄
な抵抗をして重傷を負わされたり、場合によっては命を落とすよりは、黙って犯されてやった方
が生存のための戦略として賢明であるというのは、幼い俺が身に着けた、合理的な判断だっ
た。
もちろん、ならず者の集まりなので、傍若無人な振る舞いをされるのは当たり前で、中には、サ
ディスティックな連中もいた。そういう連中だけは、何としても勘弁願いたかった。しかし、中に
は、俺に「報酬」として、食糧をくれるなどの便宜を図ってくれる連中や、情を感じて、あれこれ
世話をやいてくれる連中もいた。
しかし、食糧は、もちろん有益であったが、「情」は、時に鬱陶しかった。さっさと、目的だけ果た
して、「報酬」を置いて、帰っていってくれればいいのにと、思うことが多々あった。あの男・・・
今、俺の横に寝ているバッファローマンにどこか似たあの男も、最初はそんな奴だった。

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