At Hospital(After Replacement Matches) (10)

翌日の夕方、いつもジェイドがスカーフェイスの部屋に来る時間になっても、ジェイドは来ない。
スカーフェイスは、訳もなく落ち着かない自分が、不思議でたまらなかった。
ち、あのガキが来ないというだけで、何で俺はこんなにもやもやするんだ・・・。あいつがここに
毎日来る義理はないし、俺も、来いとは一言もいってないじゃないか・・・。
その夕方は結局、ジェイドは来なかった。スカーフェイスは退屈しのぎに本でも読もうと思った
が、どうも頭に入らない。テレビを見ても、ちっとも面白くない。
その夜、スカーフェイスは、眠れない夜を過ごした。

その翌日、ジェイドは夕方になるといつものようにスカーフェイスの病室にやってきた。
「スカー、ごめん。昨日は体調悪かったんだ。」
腕の縫合の跡が膿んだとは、ジェイドはさすがにスカーフェイスの前では言えなかった。
「フン、俺は毎日来てくれとは一言も言ってないぜ。」
しかし、ジェイドが訪れた途端、安堵に包まれた自分を、スカーフェイスは否定することができ
なかった。

それから3日ほど、ジェイドは毎日、夕方になって面会時間が終わると、同じようにスカーフェイ
スの病室を訪れた。スカーフェイスにとって、この訪問客を迎えるのは、いつの間にか、当たり
前の日課になっていた。

その翌日・・・スカーフェイスが一般病棟に移って丁度1週間が経った日、ジェイドがいつものよ
うにやって来た。
「スカー、顔のギブスとれたんだね。ほんと、良かった。」
マッスルミレニアムで砕かれた、スカーフェイスの顔が、一体どうなってしまうのか、ジェイドは
ずっと心配でたまらなかったのだ。
包帯も取れたスカーフェイスの、昔のままの美しい顔が、赤い髪の毛のように広がっているマ
スクの羽に包まれて、枕の上に浮かんでいる。ジェイドは、そんなスカーフェイスの顔を、暫く見
とれていた。
「ねえ、スカー、太股と腰はどう?」
ジェイドはそう言って、ゆっくりとスカーフェイスの体を覆っている布団をめくった。スカーフェイス
の太股が目に入る。太股はまだ、包帯に固定されていた。
「き、貴様、何しやがるんだ!このエロガキ!」
スカーフェイスは、慌てて布団を引っ張った。
ジェイドの目には、先ほど一瞬目にしたスカーフェイスの太股が焼きついていた。
そう考えているうちに、ジェイドは、自分が変な気分になってくるのを感じた。
俺は、一体どうしてしまったのだろう・・・。
ジェイドの顔は、明らかに赤らんでいるが、ジェイド自身はそれを見ることはできない。そんなジ
ェイドを、スカーフェイスは横目で見ていた。

あの優等生君、俺のことがよほど好きなのかねえ・・・。
ジェイドが帰った後、スカーフェイスはここ数日のジェイドの様子を思い出しながら、考えを巡ら
せた。スカーフェイスは、その妖艶な美貌故、男に欲望を抱かれることには数
限りないほどあった。dMPでまだ非力だった子供時代は、そのために、しばしば不当な辱めを
受けてきた。だから、決して不当な辱めを受けないほどの力を手に入れた今でも、男が自分に
向ける欲望を察することにかけては、極めて敏感であった。
あの、おそらく子供の作り方も知らない、あの優等生君がねえ・・・。よりによって、腕をもぎ取っ
て、半殺しにした俺のことをねえ・・・。
スカーフェイスは、そんなジェイドの様子が、可笑しくてたまらなかった。出来ることなら、この生
活がずっと続いて欲しかった。
俺の方も、あの優等生に、特別な感情を抱いているかもしれない。それは、かつてケビンに抱
いていたような「欲望」・・・?あいつは、あの優等生はそれを、友情だの愛情だの言った
が・・・。
しかし、いずれにせよ、そんな関係はもうすぐ終わりに近づいていることを、スカーフェイスはよ
く分かっていた。
俺が自力で歩けるようになったら、俺は超人委員会の監視付きの元、収容所のような特別の
病室に移される。そして、引き続き超人委員会の監視下で、謝罪文と誓約書を書いて、二期生
として教育されなおすことになっている。
フン、そんなの、真っ平ごめんだぜ。
だから、この生活は、俺が自力で歩けるようになったらそれでおしまいだ!俺は、この病院と、
おさらばするつもりだ。
し・・・しかし、その前に、一つだけやっておきたいことがある・・・。

NEXT(11)

トップへ
トップへ
戻る
戻る



inserted by FC2 system