At Hospital(After Replacement Matches) (9)

翌日の昼間、肉屋の夫妻がジェイドの元に再び見舞いに来たので、一緒に、ロビンマスクから
の見舞いの果物を食べた。ブロッケンJrを含めて、4人が揃っているので、ヘルガにメロンを
切ってもらった。
これが、高級な万疋屋の果物か・・・。
ジェイドは、めったに食べられない、高級な果物の味をじっくり味わった。
ロビンマスクからの見舞いの量は、半端でなかったので、果物はまだ沢山残っていた。
そういえば、スカー、果物好きだったよな・・・。
ジェイドはメロンを食べながら、そんなことを思い起こした。

夕方、面会時間が終了すると、ジェイドは再びスカーフェイスの病室を訪れた。左手に、数種類
の果物を入れた袋を抱えていた。
「スカー、今日はどう?」
ち、また来たのかよ。今日は、何の用だ?
そう答えるスカーフェイスの声が、昨日よりも心持ち力強くなっているのを聞いて、ジェイドの顔
が明るくなった。
「あ、いや、お見舞いに高級な果物いっぱい頂いちゃったから、スカー、ちょっと食べないかなと
思って・・・。」
フン、お前にそんな恩を着せられても俺は困るぜ。
「で、でも、俺、右手が使えないから果物剥けないし、レーラは不器用で果物剥くの苦手だか
ら、二人じゃ、とても食べきれないよ。スカーが果物大好きだったから、新鮮なうちに、食べても
らいたいなと思って。ほら、ナイフも持ってきたから、ここに置いておくよ。」
ジェイドはそう言って、スカーフェイスのベッドの横のサイドテーブルに、果物を詰め合わせた袋
と、ナイフを置いた。
これには、スカーフェイスは驚いた。
こ、こいつ、俺にナイフを渡すなんて、一体何を考えているんだ?
もっとも、強豪超人にとっては、ナイフの有無など、その身体能力と比べると、取るに足らない
ものであった。しかし、今の、負傷中で体の自由の利かないスカーフェイスとジェイドにとって
は、ナイフ一つでも、十分脅威になり得た。
こいつ、なんて無防備なんだ。それとも、俺のことを全面的に信頼しているのか・・・。
ち、お前がそういうなら、貰ってやるぜ。だが、俺は、ナイフは不要だ。
スカーフェイスはそう言って、ジェイドにナイフを返した。
ジェイド、その代わり、ちょっとそこの大きいコップ取ってくれ。
スカーフェイスに言われて、ジェイドは、流しの横にあった大きいコップを持ってきた。
「はい、スカー。」
ジェイドの手が、スカーフェイスの手に触れたとき、ジェイドは少し顔を赤らめた。
まあ、見てな。
スカーフェイスはそう言うと、ベッドに横たわったまま、ジェイドが持ってきた果物の一部をその
まま鷲掴みにし、力を入れて絞った。果汁が、どぼどぼとコップの中に流れ落ちる。
ち、やはり寝たままだといつもより握力が入らないぜ。いつもならもっと最後まで絞れるんだ
が・・・。
「で、でも、十分絞れているよ。」
ジェイドが、感心して眺めている。
ああ、一応、ミックスフレッシュジュースの出来上がりだ。飲んでみな。
スカーフェイスはそう言って、ジェイドにコップを渡した。
「でも、この果物、お前に食べてもらいたかったんだぜ。俺が飲んだら・・・。」
いいから、飲んでみな。
スカーフェイスに言われて、ジェイドは一口飲んだ。」
「う、上手い!体全体が、すっきりするみたいだ!スカーも飲んで。」
ジェイドはそう言って、コップをスカーフェイスの口元に持っていった。スカーフェイスの顔は、ギ
ブスのようなもので覆われていたが、液体なら、飲むことが出来そうだ。スカーフェイスが、首を
少しだけ起こして、コップに口をつける。ジェイドが見かねて、スカーフェイスの肩を支えた。
ジェイドの手に、スカーフェイスの体温が感じられる。それだけでもジェイドは、不思議な気分に
なってきたが、先ほど自分が口をつけたコップにスカーフェイスが口をつけている様子を見て、
さらに胸の鼓動が高まるのを感じた。そして、少しばかり顔を赤らめながら、スカーフェイスが
ジュースを飲む様子を見ていた。
ジェイド、俺は後でいくらでも絞れるから、お前、飲んどけ。
スカーフェイスはそう言って、再びジェイドにコップを渡した。ジェイドは、今度はスカーフェイス
が口をつけたコップに自分が口をつけることに、再び胸の鼓動が高まった。顔をさらに赤らめ
ながら、最後まで飲み干した。

なあ、ジェイド。
暫くすると、スカーフェイスが切り出した。
昨日、お前が、俺がケビンを助けたのは恩を着せようと思ったからなんかじゃないと言ってた
だろ。
「ああ。」
確かに、そうかも知れない・・・。だが、所詮、あれは俺が自分の欲望のために、ケビンが必
要だったからだ。
「欲望って・・・?」
フン、お前に言ったのが失敗だった。お子ちゃまには分からねえよな・・・。
「そ、それって、もしかして、友情じゃないの?あるいは、愛情?」
「・・・」
スカーフェイスは、それには答えなかった。

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