At Hospital(After Replacement Matches) (8)

ジェイドがスカーフェイスの病室を訪れる前に、スカーフェイスの病室を訪れた人物が一人だけ
いた。他でもない、バッファローマンであった。バッファローマンは、ロビンマスク率いるHFの教
官達とジェイドの病室を見舞ったあと、一人別行動をとり、スカーフェイスの病室を見舞ったの
であった。
「よ、スカーフェイス、様子はどうだ?」
スカーフェイスは、病室を訪れた意外な人物に、驚いた。スカーフェイスの顔は、包帯に覆わ
れ、ギブスで固定されている。
「お前、折角の別嬪が大変なことになったな・・・。」
バッファローマンは、HFの生徒として、オーバーボディーに覆われていた頃から、不思議とスカ
ーフェイスを気にかけてくれていた。スカーフェイスにとっても、バッファローマンは独学で先人
達のファイトを学んでいた頃からの憧れであり、何かと態度の悪かったHFの授業において、バ
ッファローマンの授業だけは真摯に取り組んでいた。
バッファローマンは、昼過ぎから2時間位いた。いつの間にか、スカーフェイスのことを「燕ちゃ
ん」と呼ぶようになっていた。

スカーフェイスの頭の中に、この日の出来事が去来する。バッファローマン、ジェイド・・・。彼ら
は、一体何のために、自分を見舞ったのか?こんな、悪行超人であることが明らかになった自
分を、気にかけるのか?
そして、ケビン・・・。ジェイドは、ケビンは苦渋の決断をしたという。俺があいつを助けたのは、
恩を着せるためだと言った。しかし、ジェイドはそれを否定した。
スカーフェイスの頭の中に、3年前のdMPの特訓の様子が鮮明に浮かび上がる。

マルス・・・俺も・・・もう体力の限界だ・・・。
足に鉄の錘をつけて、丸太の橋をぶら下がって渡るという地獄の特訓の中、ケビンマスクが
弱々しくつぶやいた。何人もの仲間達が、溶岩の煮えたぎる谷底に落ちていった。
「ウダウダ言ってねえで、もっと根性出しな!」
こ・・・この苦しさから逃れられるなら・・・し・・・死んだ方がマシ・・・。
ケビンの手が、丸太から滑り落ちた。次の瞬間、俺は、滑り落ちるケビンの手をしっかりと掴ん
でいる。

スカーフェイスの中に、自分でもよく分からない、不思議な感情が駆け巡った。
dMPの500人の仲間が殺された瞬間から、どこかに消えてしまったこの感情・・・。
しかし、つい最近、再びこの感情が俺を襲ってきた気がする。あれは、確か・・・。
スカーフェイスは、突然思い出した。
ジェイドをアルティメット・スカー・バスターで血祭りに上げた後、あいつは起き上がって、俺の手
を握って激励してきた。あの時、俺は一瞬戸惑った。あの瞬間も、この不思議な感情が俺の中
を駆け巡った気がする・・・。
スカーフェイスは、自分の内部を不思議なものが駆け巡り、引き裂いていくような気分になっ
た。自分が、今までの自分でなくなる気分だった。
このままでは、俺は壊れてしまう・・・。
その夜は、なかなか寝付くことができなかった。

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