翌日、ブロッケンJrはいつものように、朝からジェイドの病室に来ていた。二人は、他愛もない
話を交わしている。何だか、自分を育ててくれた老夫婦に甘えていた、子供時代に戻った気分 だ。
ブロッケンJrの家で、彼に師事してきた時は、厳しい訓練以外の時間は日常の雑事に追わ
れ、二人がゆっくり話をする時間は殆どなかった気がする。今こうして、二人でゆっくり語り合え るのは、自分が入院しているお蔭かもしれない・・・。そして二人は、スカーフェイス戦での決裂 を乗り越えて、一層絆が深まった気がする。そう考えると、ジェイドは、今回スカーフェイス戦で 重傷を負い、入院する羽目になったのも、そんなに悪い気がしなかった。
昼前、病室のドアをたたく音がすると、今度は、ロビンマスク校長率いるHFの教官たちが見舞
いに来てくれた。
「先生方、単なる試合中の怪我ですのに、わざわざ皆様でいらしてくださって申し訳ありませ
ん。」
ジェイドが恐縮する。
「あ、いや、お前が重傷を追ったのは、悪行超人が紛れ込んでいるのを見抜けなかった我々
HFの責任でもあるからな・・・。それに、我が愚息が、もっと早く事実を公表していれば、お前と スカーフェイスとの戦いは避けられたのだ。」
ロビンマスクが言った。そして、手にしてきた袋を開けた。中からは、豪華な果物の詰め合わ
せが出てきた。
「万疋屋・・・。それもこんなに沢山。随分と高級なものを・・・。」
ブロッケンJrが、驚いている。
「いや、大したものではない。」
「あんたの息子、ケビンマスクは、昨日、ジェイドを見舞ってくれたんだぜ。」
ブロッケンJrが言った。
「ケ、ケビンがここに来たのか・・・?」
「ああ。だが、昨日のうちに、日本を出ると言っていた。」
「・・・」
しばらく沈黙が続いた後、ウルフマンが言った。
「二人に伝えておこうと思ったんだが、スカーフェイスには、今日から一般病棟の○○号室にい
るが、まだ自力では歩けない。自力で歩けるようになったら、超人委員会の方で監視をつけ て、専用の病室に移すそうだ。そして、本人が反省の色を見せて、謝罪文と誓約書を書いた ら、HF二期生として、再教育を行うことに決まった。なお、当面の間は、再教育を行う過程でも 監視をつけることになっている。」
「ほ、本当ですか?スカーフェイスは、二期生としてやり直せるんですね!」
ジェイドの顔が、明るくなる。
「ああ。もっとも、本人が反省し、謝罪文と誓約書を書いたらの話だがな・・・。」
30分位雑談をすると、HFの教官たちは帰っていった。
「この近くに、良いフランス料理屋があるのだが、これから皆で、昼食でもとらないか?」
病室の外で、ロビンマスクが言う。
「あ、いや、俺はちょっと用事があるので、別行動とさせてもらう。」
バッファローマンが言った。
ロビンマスク達と別れたあと、バッファローマンは一人、先ほど訪れたのとは別の病室に向か
って行った。
「先生方も、見舞いに来てくださってしまいましたね。しかも、すごい豪華な果物まで下さっ
て・・・。」
ジェイドの病室では、ジェイドがブロッケンJrに話しかけている。
「果物か〜。お前、まだ右手が使えないから、皮剥けないよな。俺は俺で、果物なんか殆ど剥
いたことないからな・・・。こんな高級な果物、俺が汚く剥いたら勿体ないな。今度、ヘルガさん でも来てくれたら、剥いてもらって、一緒に食べろ。」
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