At Hospital(After Replacement Matches) (6)

翌日、ブロッケンJrはいつものように、朝からジェイドの病室に来ていた。二人は、他愛もない
話を交わしている。何だか、自分を育ててくれた老夫婦に甘えていた、子供時代に戻った気分
だ。
ブロッケンJrの家で、彼に師事してきた時は、厳しい訓練以外の時間は日常の雑事に追わ
れ、二人がゆっくり話をする時間は殆どなかった気がする。今こうして、二人でゆっくり語り合え
るのは、自分が入院しているお蔭かもしれない・・・。そして二人は、スカーフェイス戦での決裂
を乗り越えて、一層絆が深まった気がする。そう考えると、ジェイドは、今回スカーフェイス戦で
重傷を負い、入院する羽目になったのも、そんなに悪い気がしなかった。

昼前、病室のドアをたたく音がすると、今度は、ロビンマスク校長率いるHFの教官たちが見舞
いに来てくれた。
「先生方、単なる試合中の怪我ですのに、わざわざ皆様でいらしてくださって申し訳ありませ
ん。」
ジェイドが恐縮する。
「あ、いや、お前が重傷を追ったのは、悪行超人が紛れ込んでいるのを見抜けなかった我々
HFの責任でもあるからな・・・。それに、我が愚息が、もっと早く事実を公表していれば、お前と
スカーフェイスとの戦いは避けられたのだ。」
ロビンマスクが言った。そして、手にしてきた袋を開けた。中からは、豪華な果物の詰め合わ
せが出てきた。
「万疋屋・・・。それもこんなに沢山。随分と高級なものを・・・。」
ブロッケンJrが、驚いている。
「いや、大したものではない。」
「あんたの息子、ケビンマスクは、昨日、ジェイドを見舞ってくれたんだぜ。」
ブロッケンJrが言った。
「ケ、ケビンがここに来たのか・・・?」
「ああ。だが、昨日のうちに、日本を出ると言っていた。」
「・・・」
しばらく沈黙が続いた後、ウルフマンが言った。
「二人に伝えておこうと思ったんだが、スカーフェイスには、今日から一般病棟の○○号室にい
るが、まだ自力では歩けない。自力で歩けるようになったら、超人委員会の方で監視をつけ
て、専用の病室に移すそうだ。そして、本人が反省の色を見せて、謝罪文と誓約書を書いた
ら、HF二期生として、再教育を行うことに決まった。なお、当面の間は、再教育を行う過程でも
監視をつけることになっている。」
「ほ、本当ですか?スカーフェイスは、二期生としてやり直せるんですね!」
ジェイドの顔が、明るくなる。
「ああ。もっとも、本人が反省し、謝罪文と誓約書を書いたらの話だがな・・・。」

30分位雑談をすると、HFの教官たちは帰っていった。
「この近くに、良いフランス料理屋があるのだが、これから皆で、昼食でもとらないか?」
病室の外で、ロビンマスクが言う。
「あ、いや、俺はちょっと用事があるので、別行動とさせてもらう。」
バッファローマンが言った。
ロビンマスク達と別れたあと、バッファローマンは一人、先ほど訪れたのとは別の病室に向か
って行った。

「先生方も、見舞いに来てくださってしまいましたね。しかも、すごい豪華な果物まで下さっ
て・・・。」
ジェイドの病室では、ジェイドがブロッケンJrに話しかけている。
「果物か〜。お前、まだ右手が使えないから、皮剥けないよな。俺は俺で、果物なんか殆ど剥
いたことないからな・・・。こんな高級な果物、俺が汚く剥いたら勿体ないな。今度、ヘルガさん
でも来てくれたら、剥いてもらって、一緒に食べろ。」

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