At Hospital(After Replacement Matches) (4)

翌朝、9時に面会時間が始まるや否や、ブロッケンJrがやってきた。この日、ジェイドはICUか
ら一般病棟に移ることになっていた。ブロッケンJrの手伝いの元、ジェイドは一般病棟に移っ
た。
一般病棟で、漸く落ち着いたかと思われたとき、ヘルガが夫と共に病室を訪れた。
「ボーヤ、大丈夫かい?一般の面会が出来るようになったって聞いて、飛んできたんだよ。」
「おかみさん、わざわざ申し訳ありません・・・。あと、ご期待に沿えず、試合中に、無様な体らく
を見せてしまい、本当に申し訳ありませんでした・・・。」
「ボーヤ、何言ってるんだい。もう、済んだことじゃないかい。今は、あたしたちにとって、ボーヤ
が元気になってくれるのが一番なんだよ!」
ヘルガは、一部包帯で巻かれているものの、蜂蜜色の金髪が輝くジェイドの頭を撫でる。
「お蔭様で、右腕は、何とか縫合できたようです。あと、リハビリを行えば、元通りの機能を回復
することも可能と言われています。」
「それは、よかった・・・。とりあえず、安心したよ。」
ヘルガは続けた。
「あ、あと、これ、お見舞い・・・。さすがに、今日本にいるから、ボーヤが気に入ってくれてるうち
のソーセージは持ってこれなかったから、お菓子買って来たよ。」
ヘルガの持ってきたケーキ屋の箱を開けてみると、ケーキが5個入っていた。
「ブロッケン師匠の分もあるからね。この、ガトーショコラとチーズケーキは明日まで持つから、
今日は、こっちのプリンかババロアかムースを食べるといいよ。まあ、ブロッケン師匠は、甘い
もの、あまりお好きじゃないかも知れないけど・・・。あと、ティーパックと粉末ココアもあるから、
一緒に飲んでおくれ。」
ヘルガはそう言って、ティーパックの詰め合わせの箱と、粉末ココアの箱を取り出した。
「お気遣い、本当に有難うございます。」
ジェイドとブロッケンJrは、夫妻に頭を下げた。

4人は、しばらく他愛もない話をしていた。1時間位して、ヘルガが言った。
「ボーヤ、あたし達は、そろそろ行くね。あたし達が来たから、却って疲れさせちゃったんじゃな
いかい?ごめんね。ゆっくり休んで、よくなっておくれ。」
夫妻はそう言うと、病室をあとにした。

午後には、万太郎がAHOの仲間達を引き連れて、やってきた。ジェイドとの戦いで傷ついたカ
ゼルは包帯が取れないし、テリー・ザ・キッドは松葉杖をつき、セイウチンは車椅子に乗ってい
る。どう見ても、自分と同じ入院患者にしか見えない。万太郎に誘われて、他の病室からやっ
てきてくれたのだろうか。しかし、4人ともその表情は明るかった。
「カ、カゼル先輩、あの時は、本当に申し訳ありませんでした・・・。」
包帯に巻かれたカゼルを見て、ジェイドが言う。
「いや、試合中のことだから、気にするな。それより、お前、本当に酷い目にあって、みんな心
配していたんだぞ。」
「有難うございます。」
カゼルは、チームAHOが持ってきた紙袋を開くと、乾きものの菓子と、ペットボトルと、雑誌を取
り出した。
「お前の趣味には合わないかもしれないが、暇なとき、見ててくれ。」
カゼルが言う。
4人は、暫くいつものノリで盛り上がっていた。ジェイドは、そんな雰囲気に少し付いていけなく
なり、鬱陶しくも感じたが、皆が自分を心配してくれているその心遣いには頭が下がる思いだっ
たし、暇な病室で、気が紛れるのは悪いことではなかった。

夕方、チームAHOの4人が帰ると、病室は急に静まり返った。
「ジェイド、今日は朝からずっと賑やかで、疲れただろ。ゆっくり休め。」
ブロッケンJrが言った。
「だ、大丈夫です。俺、本当に、皆の世話になっているんですね・・・。」
ジェイドはそう言いながら、スカーフェイスのことを考える。
俺には、たくさんの仲間や、応援してくれる人たちがいる。あいつは、たった一人で、この病院
のどこかで傷の痛みに耐えているのだろうか・・・。
その時、再び病室のドアが開いた。

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