At Hospital(After Replacement Matches) (3)

暗い病室に一人残されると、ジェイドの脳裏に、スカーフェイスとの戦いの場面が次々と浮かん
でくる。
スカーフェイスに馬乗りになる自分・・・。右腕を、ジェイドが掛けた十字固めに捕えられたまま
ジェイドを持ち上げ、後ろか覆いかぶさり、チョークスリーパーを掛けるスカーフェイス・・・。あ
の時、混濁しつつある意識の中で、何とも言えない恍惚感を感じたような気が・・・。
その後、スカーフェイスはジェイドの胸から下腹部までをスワロウテイルで切り裂き、左目を潰
した。舌を引っ張られ、コンクリートリングに頭をたたきつけられるジェイド・・・。そして、スカー
フェイスの口から出まかせの情報に騙され、師匠との絆を引き裂かれたジェイドは、リバース・
ビーフケーク・ハマーで再び脳天をコンクリートリングに叩きつけられた。ついに、スカーフェイ
スは両足でジェイドの右腕を挟み、規格外の力でそれを?ぎ取った。忘れたくても忘れられな
い、屈辱と苦痛に満ちた、忌まわしい記憶の数々・・・。
しかし、ついにアルチメット・スカー・バスターを掛けられることになった時、ジェイドは、こうなっ
たのは師匠を信じなかった自分への罰だと、不思議な諦観に達していた。これでもうこの試合
が決まることが確実なだけでなく、自分の命も危ないかもしれないことは、よく分かっていた。ス
カーフェイスがジェイドを肩に乗せて空中高く舞い上がり、両足でジェイドの首を絞め、落下して
くる瞬間が、とてつもなく長く感じられた。それなのに、どういうわけか、恐怖はあまり感じない。
そして、再びあの不思議な感覚に襲われた。死と隣り合わせの恍惚感・・・この感覚は、一体
何なのか?

ジェイドの中に、この不思議な恍惚感が蘇るとともに、ジェイドは、再びスカーフェイスとの記憶
が、今度は別の形で、脳裏に浮かんできた。
テリー・ザ・キッドとの戦いで、オーバーボディーを解除して、その美しい姿を明らかにしたスカ
ーフェイス・・・。あの時、スカーフェイスのセコンドを務めていたジェイドは、スカーフェイスのラ
フ・ファイトに辟易しながらも、オーバーボディーの中から現れたその姿に暫く見とれていた。
そして、自分との準決勝の場面が浮かんでくる。馬乗りになっている自分を、勝ち誇った目で
見つめるスカーフェイスの端正な顔・・・。自分の首を絞める、逞しい両腕の感触・・・。ジャーマ
ン・スープレックスを掛けたときに手を回した、スカーフェイスの太い腰・・・。ビーフケーク・ハマ
ーを掛けようと、大きく左足を上げたスカーフェイスを後ろから抱えたときの、あの感触・・・。そ
して、自分の右腕を挟んでもぎ取り、アルチメット・スカー・バスターで自分の首を三角絞めにし
たスカーフェイスの太腿・・・。
ジェイドは、自分の肌に触れたスカーフェイスの体の感触の数々が、表現しがたい恍惚感とな
って蘇るのを感じた。そして、妙な興奮に襲われる。
この、感覚は何なんだ・・・。俺は何を考えているのだ・・・。
ジェイドは、自分のスカーフェイスに対する不思議な感覚が一体何なのか、自分では分からな
かった。痛み止めの注射の副作用か、意識が朦朧としてくる。あれこれ思いをめぐらせている
うちに、ジェイドは深い眠りに落ちていた。

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