At Hospital(After Replacement Matches) (1)

その時、ジェイドは超人病院で目覚めた。
「ジェイド、目覚めたか。」
ブロッケンJrが、ベッドの脇で心配そうにジェイドの顔を覗き込んでいる。先ほど、入替え戦の
決勝戦からこの超人病院に戻ってきたばかりであった。まだICUに入っているので、近親者と
みなされているブロッケンJr以外は、面会謝絶であった。
レ、レーラ・・・本当にごめんなさい。
師匠の顔を見て、入替え戦でのスカーフェイスとの戦いの中で起こった諸々の出来事がジェイ
ドの脳裏に蘇ってきた。しかし、重傷を負っている身に加えて、今、手術後の麻酔の副作用に
よる吐き気が著しく、その声は弱々しい。
凄まじい吐き気・・・あたかも、大海原で、小さな漁船に乗って、荒波に揉まれているようであっ
た。
「いや、俺のことは気にするな。お前の、幼い頃のトラウマに根ざす心の闇に気づいてやれず、
そんなお前と真摯に向き合って信頼関係を気づくことを怠っていた、俺が悪いんだ。」
レ、レーラ、何をおっしゃるのですか。俺、あんなに世話になっているレーラに、ひどい暴言を
吐いてしまって・・・。こんな目にあったのも、レーラのことを信頼しなかった天罰だと思っていま
す・・・。
「何を言っているんだ。とにかく、今は余計なことなど考えずに、自分の体の回復だけを考えて
ろ。」
レ、レーラ・・・。
ブロッケンJrの言葉に、ジェイドは涙ぐむ。

「ところでお前、さっきは凄かったじゃないか!お前の血の涙が・・・強烈な怨念が、万太郎を救
ったんだぜ。」
・・・
ジェイドは、ポカンとして聞いている。
「お前も、スカーフェイスの悪行阻止に、一役買ったわけだ。」
ジェイドには、ブロッケンJrが何を言っているのか、さっぱり分からなかった。
レ、レーラ、それ、どういうことですか?俺が怨念を送ったって・・・。スカーフェイスの悪行っ
て、何ですか?
思わず、ブロッケンJrに尋ねた。
「お、お前、何も知らなかったのか?俺は、てっきり、お前が手術中にスカーフェイスの裏切り
を知り、血の涙を出して悔しがって、リングでスカーフェイスと闘っている万太郎に怨念を送っ
たものとばかり・・・。」
レーラ、俺は、さっき目覚めたときに意識が戻ったばかりなのです。スカーフェイスの裏切りっ
て、一体?
「お前、本当に、何も知らなかったんだな。とすると、ドクロの徽章の奇跡は、お前の無意識の
なせる技だったのか・・・。スカーフェイスは、実はdMPの生き残りの、悪行超人だったんだぜ。
dMP再興を企んで、姿を偽ってHFに潜り込んでいたんだ。」
そ、そうだったのですか・・・。
ジェイドの顔が、翳りを見せた。
「お前、じゃあ、万太郎とスカーフェイスの戦いを全く見ていないんだな。実況中継のビデオが
あるはずだから、持ってきてやるよ。お前、顔色も悪いし、今は、ゆっくり休んでろ。」
ブロッケンJrは、そう言って、ジェイドの頭を撫でると、病室を出て行った。

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