Der Tod in Raptus? (2)

私は、宇宙船のナビゲーターを見る。この宇宙船は、かつてアンタッチャブル時代に私用機と
して使っていたものだ。そして、まだ訪れたことのない行ったことのない惑星を探す。
地図の端のほうに、"Raptus"という惑星が目に入る。こんな惑星、果たしてあっただろうか?"
Raptus"・・・その意味するところは、狂気、囚われ?いずれにせよ、今の私の旅への衝動を象
徴するような名前だ。
私は、"Raptus"に向けて、宇宙船を走らせた。

"Raptus"に着陸した私は、宇宙船を降りて、海辺を歩き出す。地球によく似た風景・・・左手に
は青い海、右手には緩やかな丘陵が広がる、広々とした寛容な風景であった。私は、海辺に
沿って、白い砂浜の上を歩き続ける。
しばらく歩くと、目の前に、何棟かのリゾートホテルと、そこに滞在している観光客らしき人々の
姿が目に入った。観光客は、その容貌から判断すると、宇宙の各惑星から訪れているらしい。
この星は、宇宙有数のリゾート地なのだろうか?

ふと、その観光客の中の、親子らしき3人組が私の目に入った。父親らしき男は、その要望か
ら、ドクロ星の超人と思われる。母親は、地球のコーカソイドを思わせる、弟の嫁のような、白
い肌に金髪に青い目をしている。かなりの美人である。そして、2人が連れている子は・・・。
私は、その子の何とも言えない美しさに目が釘付けになった。年は、10歳に届かないくらいだ
ろうか・・・。蒼白いというに近い、白くて端正な顔、猫のような妖艶な目、白に近い、水色の
髪・・・。顔立ちそのものは、母親によく似ている。
ボ、ボーン・コールド・・・私は、思わず口にしそうになった。
いや、そんな筈はない。あいつはKDDチャレンジ後、再びマッスル・プリズンに収監されている
はずだ・・・。それに、あいつの年は、今、30代後半のはずだ。
私は、宇宙船に乗っている間に何かの狂いがあって、タイムスリップしたのだろうか・・・。光速
に限りなく近い速度で移動すると、理論的にはタイムスリップが可能とも言われているが、それ
は、未来への片道旅行ではなかったか・・・。
いや、タイムスリップのはずもない・・・私は、今しがた巡った考えを否定した。あいつは、5歳の
時に母親に捨てられ、8歳の頃には既に家出をしている。しかも、あいつの顔には、その時既
に、折檻による酷い傷がついていたはずだ。しかも、実の父親による・・・。しかし、今目の前に
いるあの少年の顔には傷は全くない。
しかし・・・私の考えは再び反転する。あの少年の顔は、あいつが幼い頃、仮に顔に傷を受けな
かったらそうであったかのような顔・・・。少なくとも、私にはそう思えてならなかった。だとする
と、私は、パラレル・ワールド・・・果たしてそんなものが存在するのか疑わしいが・・・に来てしま
ったのか?あいつが幼い頃折檻も受けず、両親と幸福に暮らしていたような・・・。

私は、とにかく、その瞬間から、その少年の存在が気になって仕方がなかった。
しばらくすると、一家は、ホテルに入っていった。私は、自然と、その後をつける。ホテルの名
は、"Paradisus"、すなわち、『楽園』。私がそのホテルのフロントで、予約はしていないが、部
屋は空いているかと尋ねると、運良く空いていると言われたので、そのまま、そのホテルに滞
在することにした。

NEXT(3)

トップへ
トップへ
戻る
戻る



inserted by FC2 system