My Favorite Pupil〜Wanna make love to a man tonight who
doesn't tell me to go to bed with him tonight〜 (3)

「ブロッケン、お前の話を聞いていて、それが確かなら、残念ながら、俺もお前の推論と一緒だ
ぜ。ただ、本当に『強姦』かどうかは微妙だがな。で、俺は何をしたらいい?」
「ああ。ジェイドのことも、あの悪魔のことも良く知っているのはお前だけだと思って、お前に相
談した。俺が知りたいのは、あの日、本当は何があったのかということと、ジェイドがなぜその
ために俺を避けるようになったのかということ。そして、あの悪魔野郎が、何の魂胆で、あいつ
にあんな酷いことをしたのかということ・・・。」
「そうか。ただ、俺はそれにはちょっと乗り気がしないぜ。ジェイドがお前を避けるようになった
のは、性の意識を持ったことによる、思春期の子供にありがちな反応だと思うぜ。その時期の
子は、同性の親に対してはライバル意識を持つし、異性の親に対しては、異性として意識する
ようになり、それによって、かえって嫌悪感を抱いたり避けたりするんだぜ。あと、親や教師より
も同世代に心が向いて、彼らに心を開かなくなったり、彼らに知らせたくない秘密を抱え込んだ
り、無意味に反発するのもこの時期だぜ。お前は、ジェイドにとって、師匠であり、両親である
ようなもんだからな・・・。全ての矛先が、お前に向いちまったんだろ。だが、いずれは、お前の
元に戻ってくるぜ。今度は、自立した大人同士の、新たな関係としてな。」
「バッファ、お前、子供持ったことない割に詳しいな。実は隠し子でも育てたとか・・・。」
「お、俺に隠し子は・・・正確にはいるかいないか分からんが、少なくとも、俺の知り得る限りで
はいないぜ。俺たちHFの教官は、年頃の生徒を扱うに当たって、思春期の子供の心の問題に
ついて、レクチャーを受けたんだぜ。HFでは、教官も、勉強しなければならないんだぜ。まあ、
もっとも、この講義してくれたのがロビンだから・・・。ロビンは、若い頃に大学で教養として学ん
だらしいんだけど、あいつ、お世辞にも子育てが上手くいったわけじゃないから、いわゆる学者
さんの理論というものは、あんまり当てにならないということだがな。」
「それで、お前が乗り気でないというのは?」
「ああ、話が脱線してたな。一つは、思春期の子供に特有の現象は、それはそれとして、そもま
ま受け入れてやるべきだということだ。むしろ、子供が健全に成長するために通過しなければ
ならない現象だと思うぜ。もう一つは、これは俺の趣味として、若者の恋路に首を突っ込むの
は好きじゃないということだ。」
「こ、恋?ジェイドはあの悪魔に犯されたんだぜ!そんなのが、恋なものか!」
「その辺は、微妙だなあ。ジェイドのやつ、案外燕野郎が好きかもしれないぜ。あと、あの燕
も、なんだかんだ言ってジェイドが好きなのかもしれないぜ。」
「ば、馬鹿!ジェイドが、自分を騙し、腕をもぎ取った男・・・身も心もズタズタにした男のことを
好きなわけないだろ!そして、あの悪魔がジェイドを犯したのは、単に己の欲望を満たすため
さ。」
「その辺りも微妙だな。お前、自分の若かった頃のこと、振り返ってみろ。かつては許せないく
らい憎んでいた相手に心酔したり、その他、色々あっただろ・・・。」
「な、なら、余計やばいじゃねえか!心酔した相手に、弄ばれただけで、そのまま去られたらど
んなことになるか・・・。お前だって、その現象をよく見てきたはずだぜ。ましてや、あいつは・・・
俺を置いていったあの人とは違って、正真正銘の悪魔だぜ!」
「ごめんよ、ブロッケン。俺、お前に酷いこと言っちまったな。だが、これはあくまでも俺の勘だ
が、燕野郎は、機会があればそのうちジェイドたちの元に帰ってくると思うぜ。ただ、あいつは、
超人委員会に頭下げて、始末書書いて、HF二期生としてやり直す・・・というような、しょぼいこ
とをやりたくないんだろ。何っつうか、元悪魔の俺だから感じるような勘だが・・・。」
「さあ、それはどうだか。まあ、俺は、あの悪魔がジェイドを弄んだとしたら、あの野郎を見つけ
出して、殺してやるつもりだ。」
「わ、分かったぜ。まあ、俺が、奴ら二人の真意をそれとなく確認してきてやるよ。確認できると
いう保障はないがな・・・。」
「ああ、頼むぜ、バッファ。」
「了解。お互い泥酔しないうちに、話が纏ってよかったぜ!話がまとまったところで、さあ、昔み
たいにガンガン飲もうぜ!」
「おう!でも俺、この数年間、ジェイドのために家では一切酒飲んでなかったから、前より弱くな
ってるかもしれないぜ。」
「それならそれで、久しぶりに、とことん酔っ払っちまえ!金のことは、気にすんな!」
バッファローマンは、本当のところ、かつての自分の親友であり、恋人でもあったこの男の悩み
を、解決してやらずにはいられなかった。
俺は、30年前、悩み苦しんでいたあいつを結局救ってやることができなかった・・・。
その後悔が、バッファローマンに、ブロッケンJrに対して負い目を持たせていた。
その夜、二人は結局夜の12時過ぎまで飲んだ。

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