The Night Before The Tournament (2)

俺はこの戦いに勝って、トロフィーバルブを手に入れ、史上初のコンプリート超人になってみせ
る・・・。俺の親友でもあるケビンを助けるのがこの戦いの当初の目的であったが、そのバルブ
の存在を知ってから、俺の中で、何かが変わった。
タッグパートナーとして、マンタを蹴って、ジェイドを選んだのも、俺がこの目的を達成するのに
都合が良かったからだ。マンタと俺とのチームなら、実力的には最強であろう。しかし、優勝し
た後、俺がどのようにバルブを口にするかを考えると、少々厄介であった。その点、ジェイドな
ら・・・。
あいつは騙し易い。あいつのオツムそのものが騙されやすいのに加えて、あいつは、間違いな
く俺に惚れている・・・。それは、HF時代から感じていたことだが・・・。
そして、あいつは、マンタを除いたあのメンバーの中で、最高の身体能力と技を持っている・・・
と俺は判断している。あいつが試合でイマイチなのは、メンタルとオツムが弱いだけ。あいつが
俺に惚れている以上、俺があいつを操縦するのは造作もない。あいつを操縦できる俺とタッグ
を組めば、あいつの欠点は覆い隠せるであろう。
そして、あいつはルックスがいい。あいつとイケメン同士でチームを作ることで、20世紀では俺
たちは完全によそ者でありながら、またたく間に観客の歓心を買うことができる。それは、俺の
野望達成のためにも、都合のいいこと・・・。
俺は、ジェイドを選んだ理由を、以上のように考えていた。いや、考えることにしていたと言うべ
きか・・・。

布団に横になったスカーフェイスは、ジェイドの顔を横目で見て、今までの経緯について思いを
巡らせた。
明日、俺たちは必ず勝つ!
そう思って、スカーフェイスは目を閉じた。

ジェイドはなかなか眠ることができない。この戦いは、生きるか死ぬかの命を賭けた戦いだと、
以前スカーフェイスが言っていた。
ジェイドは、スカーフェイスの顔をそっと見る。
スカーの顔って、なんて綺麗なんだろう・・・。
あの時、入替え戦で、スカーフェイスがオーバーボディーを脱いでその正体を明らかにした時、
ジェイドはそのあまりの美しさに呆然としてしまったことを思い出した。
そして、あいつは入替え戦後の病院で、俺を見知らぬ世界に連れて行った。そのあいつと、今
こうして隣で寝ているのに、あいつは俺に何もしないのだろうか・・・。
ジェイドは改めてスカーフェイスを見る。スカーフェイスの赤いマスク・・・いや、羽というべきなの
か・・・が、長い髪の毛のように布団の上を漂っている。暗闇の中に、長い髪に包まれた端正な
白い顔が浮かんでいる様子は、何とも妖艶であった。
ジェイドは、そんなスカーフェイスを、いつまでも見とれていた。

一方、24時間臨戦態勢で、危険察知能力の著しく高いスカーフェイスは、目を閉じたものの、
そんなジェイドの視線が気になって仕方がなかった。
ケ・・・、あいつ、俺に食欲感じやがって・・・。こんなんじゃ、眠れやしねえ・・・。
今回、タッグパートナーとして寝食を共にしている間、スカーフェイスはジェイドに欲望を感じな
い訳ではなかった。しかし、ジェイドのメンタル面への影響や、互いの肉体的疲労、そして、そ
れが試合に及ぼす影響を考えると、手を出す気にはならなかった。そして何よりも、ジェイドが
自分に惚れているのを利用するためには、手を出さずにいるのが何より効果的であることを、
スカーフェイスは十分に承知していた。

他方、ジェイドは、そんなスカーフェイスの内面を知ることもなく、目を閉じているスカーフェイス
は既に眠っているものと信じ込んでいた。先ほどからずっと、スカーフェイスの顔を見つめてい
る。
ス、スカー・・・。おやすみ。
ジェイドの顔が微笑む。そして、スカーフェイス上に覆いかぶさり、その顔に、口付けをしようと
した。

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