The Night Before The Tournament (1)

究極の超人タッグトーナメントの第1回戦を明日に控えて、スカーフェイスとジェイドは、滞在先
の宿泊施設にいた。ここは、首都圏近郊にあるいわゆる「○○青少年の家」と言われる施設
で、大学生や高校生、場合によっては社会人のグループが、研修や、サークルや部活の合宿
に使う施設である。施設内に、宿泊部屋とともに会議室や多目的練習室がついており、三食ま
かない付き・・・もっとも、スカーフェイスは数日前から独自の食事をしていたのであるが・・・な
ので、ホテルに滞在してトレーニング場を借りるよりは、ずっと効率よく練習を行うことができる
のであった。都心から電車で1時間以内の距離にありながら、周囲には山に囲まれた自然が
あり、屋外トレーニングも十分可能であった。
このような施設を利用することにしたのは、ひとえに、スカーフェイスの機転によるものだった。
「スカーってすごいなあ。20世紀のことも、何でも知ってるんだなあ。」
トリニティーズ結成後、すぐにこの施設が手配されていたので、ジェイドはただ感心するだけだ
った。

夜、10時を回った。ジェイドが、トレーニング室で、スカーが持ち込んだトレーニング器具を使
って、相変わらず筋肉トレーニングに励んでいる。
「ジェイド、明日試合だから、もう休んだほうがいいぞ。この時間になったら、筋肉は、ある程度
休養を与えたほうが効果的なんだぜ。」
「分かったよ。でも、練習していないと、俺、落ち着かなくて・・・。」
「お前、俺様の生絞りジュースでも飲むか?20世紀の果物は、なかなかいけてるぜ!」
「ありがと。俺、ココア飲もうかと思ってたんだけど、スカーの生絞りだから、有難く頂くよ。」
「何がいいですかい?ルビーグレープフルーツとゴールデンキュウイ、リンゴ、バレンシアオレ
ンジがあるぜ。」
「何でもいいや。スカーのお勧め、絞ってくれ。」

ジェイドは、スカーフェイスが絞ったフレッシュオレンジジュースを口にした。
「それにしても、スカー、いつの間に、こんなに果物買ってたんだ?」
「まあな。俺様は、試合前は、フレッシュフルーツジュースしか口にしないからな。」
「なあ、スカー、お前、殆ど果物とか野菜ばっかり食べていて、何でそんなに大きくなったんだ?
俺、もっと大きくなりたくて、毎日牛乳飲んでたのに・・・。」
スカーフェイスは、そんなジェイドの発言が、可笑しくてたまらなかった。
「グフフフ・・・、腹筋痛いぜ!お前、食べたもんがそのまま体の一部になる訳じゃないんだぜ。
ゴリラだって、果物ばっかり食ってあんなに筋骨隆々しているし、サラブレッドだって、草ばっか
食ってるじゃねえか。お前、イワシ食ったからといって、イワシ超人にならないだろ?あと、牛の
子じゃないんだから、牛乳飲んだら大きくなれるって訳じゃないぜ。」
「へ〜、そうなんだ・・・。」
スカーフェイスは、やはり、ジェイドの子供っぽい発想が、可笑しくてたまらなかった。
「さあ、それ飲んだら、シャワー浴びて、ストレッチして寝るぞ。明日朝、軽いウォーミングアップ
をしよう!」

シャワーを浴びた二人が、宿泊部屋に戻ってきた。6畳の和室である。押入れから布団を出し
て敷く。ジェイドはヘルメットを外していて、濡れた金髪を乾かしている。
髪を乾かし終わると、ジェイドは窓を開けて、外をぼうっと眺めている。
「20世紀の景色って、きれいだなあ。ここ、山に近いし、星もよく見えるんだな・・・。」
「ジェイド、いきなりどうしたんだ?」
「あ、いや、なんか、せっかく20世紀に来たんだから、20世紀の風景、じっくり見ておきたいな
あと思って・・・。」
「俺たち、まだ何日もここにいるじゃないか。」
「確かにそうだよな・・・。」
そう言いながらも、ジェイドは暫くそのまま外を眺めている。

「俺は寝るぞ、ジェイド。」
スカーフェイスは、そう言って横になった。ジェイドも、漸く窓を閉めて、スカーフェイスの隣の布
団で横になった。
スカーフェイスは、ジェイドのあどけない顔を、横目で見た。そして、このトーナメントにおける自
分の野望とともに、自分がこの少年をパートナーに選んだ理由を、改めて思い起こした。

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