Because You Were With Me (2)

ここはどこだろう・・・。
ブロッケンJrは、ソルジャーを除く血盟軍のメンバーたちと、砂漠の中を彷徨っていた。
その時、遠くからソルジャーが現れた。
バッファローマン、アシュラマン、ザ・ニンジャの3人は、ソルジャーのもとに向かって駆け出し
た。しかし、ブロッケンJrは砂に足がとられて、足が動かない・・・。

「おーい、みんな、待ってくれ!」

ブロッケンJrはそう叫ぶが、その叫びが聞こえているのか聞こえていないのか、3人はブロッケ
ンJrに振り向くこともなく、一目散にソルジャーのもとに駆けて行く。

そして、3人がやって来ると、ソルジャーは、3人を連れてどこかに立ち去ろうとした。

「ソルジャーキャプテン、待ってくれ!」

一瞬、ソルジャーがこちらを振り返った。あの、独特の鋭い目で、ブロッケンJrを見た。しかし、
すぐにくるりとブロッケンJrに背を向けると、他の3人を連れて、歩き出した。

「待ってくれ!俺も、連れてってくれ!」

ブロッケンJrの叫びはむなしく、4人は瞬く間に視界から消えていった。

その時、どこかでベルが鳴った。

ベルの音に、ブロッケンJrは目を覚ました。

あれは、夢だったのか・・・。

夢から覚めたブロッケンJrは、目覚まし時計が鳴っていることに気づいた。最近、昼も夜も区
別のないような生活をしていたブロッケンJrは、いつもなら目覚まし時計を消して、もう一眠りす
るところだったが、その日は、どういう訳か再び眠る気分になれなかった。

あの夢、逆夢であってくれ・・・。

ブロッケンJrは朝の支度を済ませると、気分転換に、久し振りに散歩に出かけた。
暫く歩くと、いつも行きつけの肉屋の店主とすれ違った。

「やあ、ブロッケンさん、こんな時間に珍しいですな。」
「・・・」

店主の方から、声を掛けてきた。

「そういえばブロッケンさん、貴方、確か、王位争奪戦の時、アタル公の下で戦っていましたよ
ね。」
「ああ、そうだが・・・。」

「アタル」という言葉に、動揺したブロッケンJrは、平静を装って答えた。

「アタル様、今度はアンタッチャブルって組織結成して、王政を離れて宇宙を回るみたいです
ね。今朝のニュースで言ってましたよ。何でも、血盟軍で一緒だったザ・ニンジャさんと一緒と
か・・・。ブロッケンさん、ニンジャさんのこと、ご存知ですよね?」

ブロッケンJrの顔が、凍りついた。

「あんた、それ、本当か?」

一瞬沈黙が続いた後、ブロッケンJrは店主の胸倉をつかんで詰め寄った。

「ブロッケンさん・・・超人の力で、掴まないで下さいよ・・・。」
「す、すまぬ。」
「何なら、今朝の朝刊見て下さいよ。どこかに載ってますから・・・。」
「ああ。」

それを聞くと、ブロッケンJrは一目散に走り出した。ブロッケンJrは、テレビもめったに見ない
し、新聞もとっていなかったのだ。ブロッケンJrは、売店に立ち寄ると、他には目もくれずに新
聞を購入した。

「キン肉星大王の実兄、キン肉アタル氏、宇宙機動警察隊アンタッチャブルを結成」

一面の隅に、そのような見出しがあった。

「○月×日、去るキン肉星王位争奪戦において、ソルジャーチームのキャプテンとして活躍し
た、現キン肉星大王の実兄であるキン肉アタル氏が、王政を離れ、宇宙機動警察隊アンタッチ
ャブルを結成した。メンバーは、王位争奪戦でアタル氏の下で戦ったザ・ニンジャ氏の他・・・」

そこまで読んで、ブロッケンJrは新聞を投げ捨てた。ブロッケンJrの顔が、見る見る青ざめてき
た。

あの人、俺を置いて行ってしまった・・・。俺ではなく、ザ・ニンジャを選んで・・・。

走って家に着いたブロッケンJrは、玄関の扉を閉めると、脇にあった彫刻を手に取り、思い切
り投げつけた。彫刻は、壁にぶつかり、粉々になった。
応接に上がったブロッケンJrは、椅子を、机を、尽く投げつけた。壁に掛けてあった絵に椅子
が当たって、絵は真っ二つに割れた。

「ちくしょう!」

ブロッケンJrは絶叫した。
家具を破壊しつくしたブロッケンJrは、拳を、鉄筋の壁に入れた。超人の力で拳を受けた壁
に、亀裂が入った。ブロッケンJrの手からも、血が流れたが、超人にとっては大したことではな
かった。

「ちくしょう!」

ブロッケンJrは、今度はベルリンの赤い雨の態勢に入った。

「何で、俺じゃなかったんだ・・・?」

滅ぼしたいのは、この身・・・。
格下の弱小超人でありながら、あの人の評価だけが支えだった。なのに、あの人は俺を選ば
なかった・・・。
あの人から選ばれなかったこの俺は、何も持っていないただの弱小超人・・・。

シュパッ!

ベルリンの赤い雨が、ブロッケンJrの左手首を切り裂いた。肉がえぐれ、大量の血液が流れ出
した。

シュパッ!

もう一度、ベルリンの赤い雨の態勢に入ると、今度は左手の正肘を切り裂いた。ボタボタと、大
量の血液が床に落ちた。

畜生!この程度では死ぬことができない!
そして、俺には、腹をベルリンの赤い雨で割っ裂く勇気もない・・・。

ブロッケンJrは、既にあちこち破壊された壁に拳を打ちつけ、血の涙を流した。

続く

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