Because You Were With Me (1)

熾烈な戦いとなったキン肉星王位争奪編も、ついに終止符を打った。キン肉マンのフェイス・フ
ラッシュにより、この戦いで命を落とした戦士たちは、尽く蘇った。自らの命を捨ててプリズムマ
ンと相打ちに持ち込んだブロッケンJrも、その一人であった。
自分の死後のことであったが、ブロッケンJrは、残されたソルジャーチームの行く末と、キン肉
マンチームの勝利を、VTRで見ることができた。
そして・・・只者ではないとは思っていたが、ソルジャーの正体を知ったのも、この時であった。

俺は結局・・・キン肉マンだけでなく、ロビンマスクやテリーマン、ラーメンマン、ウォーズマン達
より、強くなることができなかったどころか、彼らと対等の活躍をすることさえできなかった・・・。

自ら未熟な存在であることを認めざるを得なかったブロッケンJrは、兄貴的存在だった正義超
人の仲間達に認めてもらい、追いつき、そして、いつかは追い越すつもりで、精進してきた。

俺は、永久に、あいつらと肩を並べることができないのか・・・。

この戦いで、自分もソルジーチームの一員として、できる限りのことをしたつもりだったが、それ
でも、ロビンマスクやラーメンマンの活躍ぶりと比べて、遙かに見劣りのする実績を苦々しく思
った。
それが、若さゆえなのか、それとも、自分のスペックが「格下」であるためなのか・・・。
前者であることを信じたいが、もはや戦いが終わってしまった以上、今後の自分の成長を見る
ことはできないだろうと、ブロッケンJrは思った。
そして、しばしば疑わずにはいられなくなる後者の可能性を認めることは、ブロッケンJrにとっ
て苦痛以外の何ものでもなかった。

バッファローマン・・・血盟軍で同僚だった彼に対しては、ブロッケンJrはどういう訳かライバル
意識を持たなかった。ロビンマスクやテリーマン、そして、師匠的存在であったラーメンマンにさ
え、自分が「格下」であることはしばしば苦痛であったが、もと悪魔超人であるこの男が自分よ
りも明らかに強いことを認めることは、全く苦痛でなかった。アシュラアンも然りだった。その理
由を、ブロッケンJr自身は知らなかったが、そのせいもあって、血盟軍という集団は、彼にとっ
て実は今までになく居心地の良いものであった。

俺は、あいつらには敵わないが・・・でも、あの人は、俺を認めてくれた。あいつらではなく、この
俺を選んでくれたんだ!そして、この未熟な俺を、そのまま評価してくれた!

ブロッケンJrにとって血盟軍が居心地の良かったもう一つの理由は、キャプテンであるキン肉
マンソルジャー、すなわち、キン肉アタルに高く評価されていたことであった。強さ、気品、リー
ダーとしての人格・・・どれをとっても非の打ちどころのないアタルは、ブロッケンJrだけでなく、
血盟軍のメンバー全員にとって、まさに「神」であった。その「神」が、自分より強いはずの他の
正義超人のメンバーではなく、自分を選んでくれ、しかも、明らかに自分よりも強いはずのバッ
ファローマンやアシュラマンを差し置いて、彼特有の評価から自分を副将に抜擢してくれたの
は、彼自身が日頃抱えていた劣等感を吹き飛ばすに十分なものであった。

だから、俺は、あの人のために命も、超人であることも、捨てた・・・。あの人のためなら、何で
もできた・・・。

そして、俺は、あの人のことが好きでたまらなかった・・・。

そして、ソルジャーとの出会い、血盟軍での練習、フェニックスチームとの戦いにおいて、常に
ソルジャーが心を占めていたことを、ブロッケンJrは認めざるを得なかった。
ソルジャーチームの一員として過ごした日々は、ブロッケンJrにとって、人生で最も輝いていた
と思えた。

あの頃は、あの人が一緒にいた。
しかし、楽しかった日々は、もう終わってしまった・・・。

キン肉星王位争奪戦の終結は、すなわち、血盟軍の解散を意味していた。

あの人は、王族として、自分の手の届かない所に行ってしまうのだろう・・・。
この先、俺とあの人との間に、一体何の接点があろうか?

キン肉マンチームの勝利の興奮が過ぎてから、ブロッケンJrは、ある種の虚脱感を感じずには
いられなかった。
それからしばらくの間、特に何かをすることもなく、無為に日々を過ごした。周りには、祖国に
帰ってブロッケン一族の使命を果たすと言いながら・・・。ブロッケンJrは、そんな自分に嫌気が
差してきた。

そんな時、ある噂を耳にした。
キン肉星の大王の実兄のアタル公が、王政を離れて、宇宙各地で悪行超人の取り締まりを行
う組織を結成するらしいという噂を・・・。

アタルという名前を耳にして、ブロッケンJrは興奮を覚えずにはいられなかった。

ハハハ・・・あの人らしいや。
しかし、あの人・・・今度は誰をメンバーにするのだろう?全く新しいメンバーか?それとも、旧
知の・・・?
もし旧知のメンバーを選ぶなら、あの人、この俺を評価してくれていた・・・。そして、この俺のこ
とを、気に入ってくれていたはず・・・。

その日以来、ブロッケンJrは、郵便物や電話、訪問客があるたびに、ある種の期待に興奮せ
ずにはいられなかった。もっとも、もともとブロッケンJrの家には、電話や訪問客はめったに来
るものではなかったのだが・・・。

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