Addiction (10)

スカーフェイスは、心のどこかで、ケビンマスクからもう一度電話がかかってくるのを待ってい
た。しかし、30分経っても、1時間経っても、着信はなかった。
リダイヤルボタンを押そうとしたスカーフェイスの手が止まった。
ち・・・なんであいつに、この俺から連絡しなければならねえんだ!
外は見事な冬晴れだった。スカーフェイスはテレビを消すと、外に駆け出して行った。

**********

オリンピックが終わってから・・・スカーフェイスの携帯電話にケビンマスクからの着信があって
から、2ヶ月近く経過した。ある朝、早く目覚めたスカーフェイスは、何気なくテレビをつけてみ
た。
突然、画面が臨時ニュースに切り替わった。

「今朝未明、沖縄県与那国島新川鼻沖の海面に、突如石で造られた階段と思われる建造物
が出現いたしました。」
緊迫感のあるレポーターの声が響く。
「この階段はどうやら、今話題の与那国海底遺跡から出現したものらしく、長年平穏だった海
底遺跡の突然の異変に、地元の人々は恐怖に震えております!」
画面には、地元の住人達や、調査隊の人々の姿が映った。
「な、なんとーっ、石片がボート上の学者及び警察官の全身を刺し貫くーっ!」

こ・・・これは異常事態!しかも、ドス黒い悪の影を感じる!
長年培われた、危機に対する人一倍研ぎ澄まされた感覚で、スカーフェイスは、事態の深刻さ
を即座に感じ取った。
今、イギリスは、深夜か・・・。あいつ、もう寝ているだろうか。いや、寝ていようと、構わねえ!
スカーフェイスは携帯電話を手にすると、殆ど何の迷いもなく、発信ボタンを押した。

「お、お前、急にどうしたんだ?」
電話の向こうから、かつてよく聞きなれた声が聞こえてくる。
「よう、鉄仮面、久しぶりだな。寝てなかったか?」
「いや、もうすぐ寝るところだった。」
「それはよかった・・・。お前、寝起き、機嫌が悪いからな。」
「それよりもお前、オリンピックの後、俺が電話したとき、なぜ出なかったんだ?俺は、お前
に・・・。」
会いたかったのに・・・と聞こえたような気がした。スカーフェイスは、その問いに、直接は答え
なかった。
「フン、この俺にも、色々と事情があってな・・・。それよりも、偉大なチャンピョンさんよう、今、
ニュースつけてみろ。」
「・・・」
電話の向こうで、テレビがつけられたらしい。
「マルス、お前、これって一体・・・?」
「フ、やけに邪悪な臭いを感じねえか?」
「ああ・・・。」
暫く沈黙が続いた後、スカーフェイスが言った。
「なあ、ケビン、ここは、俺たち元ワル同士協力して、この見えないドス黒い敵と闘ってみねえ
か?」

「フン、俺は正義超人になったなどとは、一言も言ってねえぜ。あんなHFのAHO達と一緒にされ
るなんて、真っ平ご免だぜ。ただ、凶悪な敵と闘うことは、ウズウズするぜ!」
「・・・」
マルスは、続けた。
「今は、まだ事態はよく掴めない。更なる仲間が必要になるかも知れねえ。だが、とりあえず、
今から日本に来い!」
「ああ、分かった。オリンピックチャンピョンの何かけて、未知の敵と闘ってやるぜ!」
「それから、俺の名は、『スカーフェイス』だからな。『マルス』と呼んだら、承知しねえぞ。」
「フン、俺も『ケビンマスク』だ!『鉄仮面』なんて呼んだら、どうなるか分かってるな!」

スカーフェイスの直感は当たり、いち早く現場に駆けつけたミートの体は、バラバラにされた。
そして、未知の敵に挑んだHFの正義超人たちは、バリアゲートを突破することができなかっ
た。
その頃、スカーフェイスとケビンマスクに、イリューヒンとハンゾウとバリアフリーマンを加えた5
人は、ミートを救出するために命を賭けて闘うべく、一所に結集したところだった。

END

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