A Nightmare (4)

あ、熱い!顔が・・・焼けるように熱い!
顔中に激痛を覚え、目を覚ますと、俺は一人、ベッドに寝ている。
今のは、夢だったのか・・・。
俺は、ヘル・イクスパンションとの悪夢のような闘いを思い出す。
右肩にも、鈍痛を感じる。しかし、右肩と顔以外には、特に致命的なダメージは負っていないは
ずだ。
くそ、あの野獣に、血など吸われなければ、簡単にはダウンしなかったのに・・・。
あの闘いにおける俺の急速な疲弊は、おそらく、失血によりヘモグロビンが急速に減少したこ
とによるものだろう。
その時、パートナーの少年・・・ジェイドのことが、俺の脳裏を駆け巡った。
ダウンした俺が、最後の力を振り絞って・・・俺の中の悪魔に反して助けたあの少年は、両目の
視力を奪われたまま、一人リングに残されて、一体、どうなったのか?
俺は、最悪の事態を想像して、ぞっとした。

その時、病室のドアがそっと開けられた気配がした。俺の顔は、目まで包帯で覆われているの
で、包帯をずらさないと見ることもできないが、俺は、病室に入ってきたヤツが誰であるか、す
ぐに分かった。
まるで、あの時の再現のようだ。
俺は、入替え戦の後、あいつが俺の病室を訪れた時の状況を、鮮明に思い起こした。

そいつは、俺を起こしてはならないと気を使っているのか、忍び足で、俺のほうに近づいてく
る。そして、そいつの手が、俺の手に軽く触れる。俺の指は、俺より熱い指先をしたそいつの体
温を感じた。
ジ・・・ジェイド・・・どうしてここへ・・・
先に声を出したのは、俺の方だった。しかし、剥がされた顔の表情筋が動かせないためか、酷
くしゃべりにくい。
「す・・・すまん。起こしてしまった・・・。」
いや、丁度今、たまたま起きたところだ。

こいつは何とか無事だったようだ・・・。
俺は、不思議な安堵感に包まれた。こいつが無事であることが、自分にとってこんなにも喜ば
しく感じられることが、我ながら不思議でたまらなかった。
そして次の瞬間、あの悪夢で、あいつの前で俺の痴態が晒されていたのを思い出し、俺らしく
もない羞恥心を覚えた。しかし、その羞恥心とともに、ある種の興奮を覚えずにはいられなかっ
た。
俺は、この後、この場でこいつに抱かれるかもしれない・・・。しかし、それも、悪くはない・・・。
俺は、この場で、この後訪れるかも知れない運命に、身を任せる覚悟が出来た。

END

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