Deja vu〜Feeling for You〜 (5)

薄暗い病院の小さなベッドで、大きな男二人が寄り添って寝ている。
金髪の少年は、頭を、自分よりさらに一回り大きい男の胸に乗せ、下にいる男の手が、少年の
金髪に触れている。少年は、男の胸の鼓動を感じながら、深い眠りに陥っている。
朝日が昇り、窓の外では、鳥の鳴く声がする。

ふと、下の男が目を覚ました。
ジ・・・ジェイド、朝だ・・・。
男は少年の体を、優しく揺する。少年の包帯の下の目が、ピクピク動いているようだ。
ジェイドは、夢を見ているのだろうか。
「う・・・う〜ん・・・。」
少年は、眠そうにしている。
もう5時だ。もうすぐ、看護士が回ってきててしまうぞ。
眠そうにしていた少年は、ようやく目を開ける。
「ゆ・・・夢を見ていた・・・。」
何の夢だ?
尋ねられると、少年は黙って顔を赤くする。
そして、あれは、夢ではなかったのか?
ようやく夢と現の狭間から我に返った少年は、昨夜の行為を思い出して、顔を赤くする。
「ス、スカー、ごめん。大丈夫か?俺、昨夜、めちゃくちゃなことしていたかも・・・。」
少年は、昨夜の痕跡が気になって仕方がなかったが、目が見えないので、それを確かめること
ができない。
さあ、何のことかな・・・。
男はそう言って、再び少年の金髪で覆われた頭に触れる。

ジェイド、もうお前の部屋に戻らないと・・・。
「う・・・うん。分かった。」
お前、目が見えないだろ。部屋まで送っててやる。
「ス、スカー、もう立っても大丈夫なのか?」
ふん、俺様の回復力をなめちゃいけんな。
男はそう言いながらも、包帯の下の顔については、いまだ先行きが見えない状態であった。

男は少年の腕を掴んで、少年の病室に向かう。
「ス、スカー、あそこにいるの、今日までなんだろ?明日からは、階下の大部屋なんだろ?」
ああ、そうらしいな。

二人は、目的の病室にたどり着いた。
ほれ、看護士が来るまで、大人しくねんねしてな。
男はそう言って、少年をベッドに乗せ、布団を掛けてやった。
「ス、スカー・・・。」
少年はそう言って、両手で男の手をとり、指を絡ませてきた。
「ス、スカー、俺達、またこうして会えるよな・・・。」
男はそれには答えずに、黙って、指を握り返した。

「それじゃあ、俺は戻るぞ。」
男は、自らの唇が使えないことを、再び残念に思う。
少年の頭を軽く撫でると、男は少年の病室を後にした。

END

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